社内チャットの履歴を取り出す方法|APIで取れないときの進め方と自動化の線引き
社内チャットに、給与明細や社会保険の書類、有給の申請が何か月ぶんも溜まっている。必要なときはチャットをさかのぼって探し、見つからなければ送った人にもう一度送ってもらう――そんな状態を、AIや自動化でまとめて片づけたいと考えたことはないでしょうか。
この記事では、当協会の工藤が支援先で実際に取り組んだ「社内チャットに溜まった書類の整理」を例に、自動化を考える前に確かめるべきこと、まとめて取り出せないと分かったときの進め方、そして全部を自動にしないという線の引き方を紹介します。結論から書くと、まとめて取り出す方法はありませんでした。それが分かるまでに半日かかり、分かってからの作業は一日で終わりました。
社内チャットに書類が溜まる状態とは
その会社では、次のような書類がすべて社内チャットのトークルームに流れていました。
- 給与明細
- 社会保険の通知書
- 有給の申請
紙で回っているわけでも、フォルダに整理されているわけでもありません。会話の中に混ざって流れていく。必要になったらチャットをさかのぼって探し、探せないときは送った人にもう一度送ってもらう。そういう状態が何か月も続いていました。
工藤が最初に考えたのは、いちばん普通のことです。チャットのデータを機械で丸ごと取り出して、一覧表に並べ直す。そのうえでAIに読ませて、誰の何の書類かを仕分けする。ここまでは、よくある話だと思っていました。
社内チャットの履歴をAPIで取り出せるか確かめる
そのチャットサービスには、外部のプログラムから操作するための仕組み(API)が公開されています。工藤はまずその一覧を全部読みました。
できること・できないことを一覧で確認した
- メッセージを送る仕組み … ある
- メンバーの一覧を取る仕組み … ある
- カレンダー・掲示板を取ったり書いたりする仕組み … ある
- トークルームの過去の会話を読む仕組み … どこにもない
- トークルームに溜まったファイルの一覧を取る仕組み … ない
近い仕組みは「これから届くもの」だけ
ひとつだけ近いものがありました。チャットに常駐させるプログラムを置いておくと、そこに届いたファイルを受け取れる。ただしこれは、これから届くものだけです。すでに溜まっている過去のぶんは、まったく対象になりません。
この時点で半日が過ぎていました。「できるはずだ」と思って探していた時間です。
権限を上げても解決しない理由
次に考えたのは、権限の話です。工藤は、そのチャットの中では一般のメンバーでした。管理者の画面は開けません。だから見えないのだろう、と考えました。
管理者に頼んで、権限をひとつ上げてもらう。その段取りを組みかけて、手を止めました。権限を上げても、読む仕組みそのものが存在しないことに変わりはないからです。
鍵を増やしても、扉がなければ入れません。
ここで頼んでいたら、先方の管理者に手間をかけたうえで、結果は何も変わらなかった。そのお願いをしなくて済んだことが、この日いちばん良かったことでした。
取り出せないときの方法|画面を開いて1件ずつ保存する
残った手段はひとつです。人が画面を開いて、目で見て、1件ずつ保存する。
実際に保存した件数
- 書類のファイル … 10件
- テキストのやり取り … 20件
- 写真 … 22件
写真は画面の上では34個に見えていたのですが、1回の送信に複数枚まとめて入っているものがあり、実際のファイル数は22件でした。数え方を間違えると、取り残しが出ます。
一覧表と「取り込み記録」タブを作る
保存したものは、その場で一覧表に起こしました。誰がいつ送ったどの書類か。有給の申請なら、誰が何日ぶんを、いつからいつまで。
このとき一覧表に「取り込み記録」というタブを足しました。どこまで取り込んだかを書いておく場所です。次にやるときは、ここを見て、続きから取ればいい。これがないと、毎回ぜんぶを見直すことになります。
書類整理で失敗した2つのこと
うまくいかなかった一手が2つあります。どちらも、自分の思い込みでした。
失敗1:「期限切れ」の表示をそのまま結論にした
写真の一覧を開いたとき、画面の裏側に「期限切れ」という印が付いていました。保存できる期間を過ぎたのだと判断して、いったん「写真は取れません」と結論を出しました。
あとで念のため1枚だけ開いてみたら、普通に保存できました。印は付いていても、中身は生きていたということです。画面に出ている言葉を、確かめずに結論にしていました。
失敗2:まとめて移動して、関係のない画像を巻き込んだ
保存したファイルを専用のフォルダへ移すとき、ファイル名の先頭の数字だけを見て「6で始まるもの」とまとめて指定しました。その結果、関係のない画像を15件、一緒に巻き込んで移動させてしまいました。工藤が別の用事で保存していた画像です。
すぐに気づいて、ファイル名の形(数字が18桁だけのもの)で判定し直し、元に戻しました。件数を数え直して、1件ずつ確認しています。
まとめて動かす指示は速いぶん、間違えたときも速い。移動の前に「何件が対象か」を表示させて、目で見てから実行する。それだけで防げました。
自動化できない場所があるときの考え方|全部を自動にしない
この作業は、一度やって終わりではありません。有給の申請は週に何件かのペースで増えていきます。放っておけば、また溜まります。
定期的に自動で取り込む仕組みを作れないか、と考えました。作れませんでした。取り出す部分に人の操作が必要だからです。そこが自動にならない以上、全体を自動にはできません。
自動にしたのは「忘れない仕組み」だけ
そこで、決めたのはこうです。
- 月に2回、決まった日に「前回からどれくらい経ったか」だけを自動で知らせる
- 14日以上あいていたら「そろそろ取り込みましょう」と出す
- 実際の取り込みは、そのときに人が画面を開いて行う
自動にしたのは、忘れないようにする部分だけです。取り出す部分は人が動かす。この線の引き方で、溜まりっぱなしの状態は止まりました。
全部が自動にならないと分かった時点で、諦めてしまうことがあります。けれど、止まっていた本当の原因は「忘れること」のほうでした。そこだけ自動にすれば、実害は消えます。
自動化を考える前に確かめる3つの手順
- 社内で「探すのに時間がかかっている場所」を1つ挙げる
- そこのデータを、機械でまとめて取り出せるかどうかを先に確かめる
- 取り出せないと分かったら、取り出す作業は人が持ったまま、忘れない仕組みだけを先に作る
順番が大事です。多くの場合、取り出せるかどうかを確かめる前に、その先の仕組みを考え始めてしまいます。工藤もそうでした。半日を使ってから、扉がないことに気づきました。
かかった時間を、時間単価で考える
もうひとつ。この半日と、そのあとの一日。ここにかかった時間の単価は、いくらでしょうか。
社長ご自身が同じ作業をすると、時給に直すといくらになるか。その金額を出してから、どこを人が持ち、どこを機械に渡すかを決める。そうすると、判断がぶれにくくなります。
AIを入れる相談を受けるとき、工藤が最初に見るのは、どのツールを使うかではありません。どこが自動にならないか、です。そこが分かると、残りは進みます。
現場の困りごとを、自分で小さな仕組みを作って解決した例は「ビフォーアフター写真を同じ画角で撮る方法」でも紹介しています。
まとめ
- 自動化を考える前に、データを機械でまとめて取り出せるかを先に確かめる。今回は過去の会話を読む仕組みが無く、分かるまでに半日かかった
- 仕組みそのものが無いときは、権限を上げても解決しない。鍵を増やしても、扉がなければ入れない
- 人が1件ずつ保存するときは、件数を正しく数え、「取り込み記録」で続きから取れるようにする。まとめて動かす前は対象件数を目で確かめる
- 全部を自動にできなくても、止まっていた原因が「忘れること」なら、知らせる部分だけを自動にすれば実害は消える
岩手県AI活用協会のサポート
当協会は東京都八王子市と岩手県盛岡市に事務所を置いています。ご相談の内容に応じて、現地にうかがうこともあれば、オンラインで進めることもあります。盛岡でのAI活用支援については「盛岡のAI活用支援」のページもご覧ください。
「社内のどこが自動にできて、どこが自動にならないか」を一緒に整理したい方は、お気軽に無料相談からお問い合わせください。
※この記事は、工藤がnoteに書いた記事(社内チャットの履歴は、APIでは取れませんでした)の内容を、ブログ向けに再構成したものです。

