生成AIのリスクはいつ見えるか|中小企業2,503社の調査で分かった導入の順番とルールづくり

「情報が漏れるのが怖いので、AIはまだ様子を見ています」。中小企業の方と話していると、こうした前置きをよく聞きます。生成AIのリスクが心配で、導入に踏み切れない――そんな悩みを持つ経営者の方は少なくありません。

この記事では、2026年10月1日に公表された「中小企業における生成AI活用に関する実態調査」(回答2,503社)の数字をもとに、使っていない会社が止まっている本当の理由、毎日使う会社ほどリスクを課題に挙げる理由、社内ルールの整備状況、そして当協会の工藤が支援の現場でお勧めしている「使い道 → 使い始める → ルール」という導入の順番を紹介します。

生成AIを使わない理由の1位は「リスク」ではなかった

読んだのは「中小企業における生成AI活用に関する実態調査」です。株式会社エフアンドエムの中小企業総合研究所が、2026年9月30日付でまとめました。会員企業2,503社が回答しています。

使っていない会社(582社)が選んだ理由

生成AIを一度も使ったことがない会社(582社)に、使っていない理由を1つだけ選んでもらった結果がこれです。

  • 具体的な活用場面が分からない:36.6%
  • 必要性や関心を感じない:31.3%
  • ITに詳しい人や推進する人がいない:13.2%
  • 検討や学習の時間がない:6.9%
  • 情報漏えいや著作権などのリスク:3.4%
  • 費用や費用対効果:2.7%

リスクをいちばんの理由に選んだ会社は、582社のうち20社でした。費用は16社です。

一度使ってやめた会社(132社)の理由

一度は使ってやめた会社(132社)でも、いちばん多い理由は「活用場面・方法が分からない」で35.6%でした。

使っていない会社が止まっている場所は、リスクでもお金でもありません。「何に使うか」が決まっていないところです。

生成AIのリスクは使い始めてから見えてくる

ところが、使っている会社に「いまの課題」を聞くと、景色が変わります。

利用頻度別に見た2つの課題

使う頻度別に、2つの課題を並べるとこうなります。

  • 情報漏えいや著作権などのリスク:ほぼ毎日52.4%/週2〜3日45.2%/月に数回32.0%
  • 業務への落とし込み方が分からない:ほぼ毎日24.5%/週2〜3日38.0%/月に数回39.7%

月に数回しか使わない会社では、いちばんの課題は「どの業務に組み込むか」です。毎日使う会社では、これがリスクに置き換わっています。

3.4%と52.4%を読むときの注意

使っていない会社で、リスクをいちばんの理由に選んだのは3.4%でした。毎日使う会社では、課題としてリスクを挙げた会社が半数を超えます。

前者は1つだけ選ぶ設問、後者は複数選べる設問なので、数字どうしを単純には比べられません。それでも、見えている景色の違いははっきりしています。

調査のまとめにも、リスクを意識するのは実際に使い始めてからだ、という趣旨の考察が書かれています。ただし、同じ会社を時間を追って調べたものではありません。

工藤自身も、使っていく中でリスクに気づいた

工藤自身も、AIに日々の作業を任せるようになってから、ファイルの一括移動で同じ名前のファイルを上書きしたことがあります。9月29日のnote記事に書いた件です。

使っていく中で初めて見えたリスクでした。

中小企業の生成AI利用率は7割、毎日使うのは2割

そもそも、どれくらいの会社が使っているのか。この調査では、いま業務で使っている会社は68.6%(2,503社のうち1,716社)でした。

ただし内訳を見ると、「ほぼ毎日」は21.6%です。いちばん多いのは「月に数回、必要なときだけ」の32.2%でした。

自由記述には次のような声がありました。

一部従業員は毎日のように利用しているが、使わない人はほとんど使っていない(製造業)

7割という数字には、社長や一部の社員だけが使っている会社も多く含まれていると読むのが自然です。

生成AIの社内ルールがあるのは、毎日使う会社でも4社に1社

では、毎日使ってリスクが見えている会社は、ルールを作っているのか。

  • ほぼ毎日使う会社で、正式な規程か大まかなルールがある:24.1%(4社に1社)
  • 「個人の判断に任せている」:40.4%
  • 「利用状況を把握していない」:17.4%

個人任せと把握していないを合わせると57.8%です。

全体(2,503社)で見ると、ルールを整備している会社は約1割にとどまります。こちらは使っていない会社も含めた数字です。

リスクが見えているのに、まだ線が引かれていない。いちばん危ないのは、使っていない会社ではなく、ここだと工藤は考えています。

この調査の数字を読むときの注意点

調査の数字は「導入の中身・誰に聞いたか・中小企業の線」を確かめてから使う、という物差しを、AI導入率の調査の読み方の記事で紹介しました。この調査にも同じ物差しを当てておきます。

  • 回答したのはエフアンドエムクラブの会員企業で、日本の中小企業全体を代表する数字ではありません
  • 回答企業は建設業24.4%、製造業28.5%と、この2業種で半分を超えます
  • 従業員101人以上の会社も8.3%含まれ、レポートに中小企業の線引きは書かれていません
  • 利用頻度と課題や効果の関係は、どちらが原因かまでは分かりません。レポート自身がそう断っています

建設業と製造業が多いのは、工藤の支援先と近い構成です。その意味では、手触りの近い数字だと受け止めています。

生成AI導入の順番は「使い道 → 使い始める → ルール」

ここまでをまとめると、こうなります。

  1. 使っていない会社が止まっているのは、リスクではなく「使い道」
  2. リスクは、使い始めてから具体的に見えてくるようだ(調査の考察も同じ見方)
  3. 見えたあとでも、多くの会社はまだ線を引いていない

支援の現場でお勧めしている3つの手順

  1. 使い道を1つだけ決める(議事録の要約、見積書の下書きなど)
  2. 実際に使い始めて、何が起きるかを見る
  3. 見えたものから、最低限のルールを決める

最初のルールは1行でいい

ルールは最初から完璧でなくてかまいません。工藤が最初の1行にしているのは「取り消せない操作は、人が確かめてから実行する」です。次の操作がこれにあたります。

  • 送信
  • 公開
  • 削除
  • 上書き

レポートも、最低限のルールとして次の3点を挙げています。

  • 入れてはいけない情報
  • 使ってよいツールとアカウント
  • 社外に出す文書や重要な判断は人が確認すること

様子見の時間を時間単価で考える

最後にひとつ。「何に使うか」を決めないまま様子を見ている時間にも、値段がついています。

社長ご自身の時間単価に、この半年で「AIをどうするか」を考えて止まっていた時間を掛けてみてください。使い道を1つ決めるほうが、ずっと安く済むはずです。

まとめ

  • 生成AIを使っていない会社の理由の1位は「具体的な活用場面が分からない」(36.6%)で、リスクを選んだのは3.4%だった
  • 毎日使う会社では、課題としてリスクを挙げた会社が52.4%。リスクは使い始めてから見えてくるようだ(設問形式が違うため単純比較はしない)
  • 毎日使う会社でも、ルールがあるのは24.1%。個人任せ・把握していないが合わせて57.8%
  • 順番は「使い道を1つ決める → 使い始める → 見えたものから最低限のルール」。最初の1行は「取り消せない操作は、人が確かめてから実行する」

出典

岩手県AI活用協会のサポート

当協会は東京都八王子市と岩手県盛岡市に事務所を置いています。ご相談の内容に応じて、現地にうかがうこともあれば、オンラインで進めることもあります。盛岡でのAI活用支援については「盛岡のAI活用支援」のページもご覧ください。

生成AIの使い道を一緒に決めるところからご相談したい方は、お気軽に無料相談からお問い合わせください。

※この記事は、工藤がnoteに書いた記事(AIのリスクは、使い始めてから見えてくる)の内容を、ブログ向けに再構成したものです。