AI導入率とは|調査で16%〜86%に割れる3つの理由と自社との比べ方

「中小企業のAI導入率は何%なのか」。調べてみると、86.4%という数字もあれば、16.6%という数字も出てきます。続けて読んだ方は「どれが本当なんだ」と思うはずです。当協会の工藤も、この秋にnoteとXで紹介した導入率を並べ直して、16.6%から86.4%まで散らばっていることに気づきました。

この記事では、AI導入率が調査によってここまで割れる理由を3つに整理し、自社と比べるときにどの数字を選べばよいかを紹介します。先に結論を書くと、どれも公表された調査の本当の数字です。数えているものと、聞いている相手が違います。

AI導入率の調査結果|5つの数字を並べる

工藤がこの秋に使った4つの数字に、AI導入支援会社が出している推定値を1つ加えました。

  • 86.4% 総務省「令和8年版情報通信白書」(大企業を含む日本企業の数字)
  • 34.5% 帝国データバンク「生成AIに関する企業の動向調査(2026年3月)」
  • 20.4% 中小企業基盤整備機構「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査」
  • 16.6% 情報処理推進機構(IPA)のDX動向調査(2026年7月公表のポイント)で、従業員101人以下の企業
  • 約12% 株式会社Leach「中小企業AI導入実態調査2026」の推定値

同じ「AIの導入」を同じ相手に聞いていれば、ここまで割れるとは考えにくい数字です。違うのは、次の3つです。

AI導入率が調査で割れる3つの理由

理由1:「導入」の中身が違う

まず、何をもって「導入」と数えているかが、調査ごとに違います。

  • 総務省の86.4%は「自社の何らかの業務で生成AIを利用している」割合です
  • 帝国データバンクの34.5%は、生成AIを「非常に活用している」「やや活用している」と答えた割合の合計です
  • 中小機構の20.4%は「全社的に導入している」と「一部の業務で導入している」の合計です。ここでいう「AI」は生成AIに限らず、画像認識や音声認識も含みます
  • IPAの16.6%は「AIの導入状況」の数字で、公表されたポイント資料には「導入」の定義は書かれていません
  • Leachの約12%は、業務プロセスにAIが組み込まれ、継続して運用されている状態を「導入」と定義しています

「どこかの業務で使っている」と「仕事の流れに組み込んで回している」では、同じ会社でも答えが変わりえます。

社員が個人でChatGPTを使い、文章を整えている会社を考えてみてください。「何らかの業務で使っているか」と聞かれれば、「はい」と答える可能性が高いはずです。「業務プロセスに組み込まれているか」という定義なら、「導入していない」側に入りえます。

理由2:誰に聞いたかが違う

次に、答えた会社と人が違います。

  • 総務省:ネット調査会社のモニターから回答者を選んでいます。条件は、従業員10名以上で、2025年までにデジタル化の取り組みを始めた企業に勤める管理職以上です。日本の有効回答は515件で、うち大企業が353件、中小企業が162件。86.4%のグラフの回答数は477件でした。中小企業だけの値は、概要版には載っていません
  • 帝国データバンク:全国2万3,349社に聞き、1万312社が回答。大企業も含む数字で、中小企業だけなら32.4%、小規模企業なら28.0%です
  • 中小機構:全国の中小企業1万社にWebアンケートを行い、1,647社が回答
  • IPA:国内企業の経営層や情報システム部門、DX推進部門などに聞き、1,799社が回答。16.6%は、そのうち従業員101人以下の企業の数字です
  • Leach:自社の支援先40社超へのヒアリングと、各種の業界調査や公的資料をもとに推定。発表文には「中小企業全体を統計的に代表するものではありません」と書かれています

総務省の調査は、大企業が7割近くを占め、しかも「デジタル化を始めている会社の管理職」に聞いています。高めに出やすい条件だと工藤は見ています。

理由3:「中小企業」の線が違う

同じ「中小企業」という言葉でも、線の引き方がそろっていません。

  • 中小機構は、中小企業基本法の定義
  • Leachは、従業員300名以下
  • IPAの16.6%は、従業員101人以下
  • 総務省は従業員数だけで線を引き、製造業や建設業などは300人未満、卸売・小売業やサービス業などは100人未満を中小企業として集計

従業員150人の会社は、ある調査では中小企業に入り、別の調査では入りません。業種によっても変わります。

自社のAI導入状況と比べる方法|数字を選ぶ前の3つの確認

では、経営者はどの数字を見ればいいのか。工藤は、数字を選ぶ前に3つを確かめています。

  1. 「導入」は、どこかで使っている状態か、仕事の流れに入っている状態か
  2. 答えたのは、どんな会社の、誰か
  3. 自社と規模の線が近いか

比べたい中身ごとに、近い物差しを選ぶ

  • 「生成AIを業務で活用していると言えるか」で比べるなら、帝国データバンクの中小企業32.4%が近い物差しです。規模が小さければ、小規模企業の28.0%も参考になります
  • 「会社としてAIを導入したと言えるか」で比べるなら、中小機構の20.4%が近い物差しです。ただし、生成AI以外のAIも含んだ数字です
  • 「業務の流れに組み込んで回しているか」まで問うなら、Leachの約12%が同じ方向の定義です。ただし推定値なので、目安にとどめます

86.4%を見て「うちは遅れている」と焦る必要はありません。大企業を含み、デジタル化を始めた会社の管理職に聞いた数字です。

導入率を発信するときに直すこと

冒頭に書いたとおり、工藤自身がこの4つの数字をばらばらに使ってきました。

一本ずつには、調査した機関の名前を書いていました。ただ、並べて読まれたときにどう見えるかまでは、考えていませんでした。

これからは導入率を書くとき、「何を数えた数字か」と「誰に聞いた数字か」を一緒に書きます。「生成AIを何らかの業務で使っている割合」と「業務に組み込んでいる割合」は別物です。同じ「導入率」という言葉ではまとめません。

数字より先に、自社の1行を決める

最後に、いちばん伝えたいことです。

他社の導入率は、自社が次に何をすべきかまでは教えてくれません。20%台の側にいても、80%台の側にいても、明日やることは同じです。

「毎月◯時間かかっている△△を、◯時間にする」

この1行が決まっている会社は、どの調査の数字を見ても揺れません。決まっていない会社は、どの数字を見ても不安になります。

その△△にかかっている時間に、ご自身の時間単価を掛けてみてください。業界の導入率よりも、はっきりした判断材料になるはずです。

AIにかける予算と、実際に始めている会社の割合の差については「AIに100万円出す会社は7割、始めている会社は2割」でも紹介しています。

まとめ

  • AI導入率は、調査によって16.6%から86.4%(推定値を入れると約12%)まで割れる。どれかが間違っているわけではない
  • 割れる理由は、①「導入」の中身 ②誰に聞いたか ③「中小企業」の線 の3つが調査ごとに違うから
  • 自社と比べるときは、この3つを確かめてから、比べたい中身に近い数字を選ぶ
  • 他社の数字より先に「毎月◯時間かかっている△△を、◯時間にする」の1行を決める

出典

岩手県AI活用協会のサポート

当協会は東京都八王子市と岩手県盛岡市に事務所を置いています。ご相談の内容に応じて、現地にうかがうこともあれば、オンラインで進めることもあります。盛岡でのAI活用支援については「盛岡のAI活用支援」のページもご覧ください。

自社の場合、どの業務のどの時間から手をつけるか。具体的な業務でご相談いただければ、一緒に整理します。お気軽に無料相談からお問い合わせください。

※この記事は、工藤がnoteに書いた記事(AI導入率が16%〜86%に割れる理由)の内容を、ブログ向けに再構成したものです。