AIに100万円出す会社は7割、始めている会社は2割
「AIに、いくらぐらいかければいいですか」
相談の場でよく聞かれます。金額の話は、たいていすぐに進みます。
止まるのはその次です。「では、どの業務から外しますか」と聞いた瞬間に、会話が止まります。
先月、その感覚に近い数字を2つ見つけました。
予算の話はできるのに、着手の話にならない
AI導入の相談で最初に出てくるのは、ほとんどが費用の話です。
いくらかかるのか。補助金は使えるのか。月々いくらまでなら出せるのか。
ここまでは多くの会社ですぐに決まります。予算は、会議室の中で考えれば決められるからです。
決まらないのは対象業務のほうです。どの作業を誰の手から外すのかは、現場を見て、実際にかかっている時間を数えないと決められません。だから後回しになります。
これは経営者の怠慢ではなく、決めやすいものから決めているだけだと思っています。ただ、その順番だと着手までが長くなります。
投資予定と導入率を並べてみる
デル・テクノロジーズが2026年8月21日に発表した「中堅中小企業向け IT投資動向調査2026」では、AI/生成AIに100万円以上を投資する予定の企業が68.1%でした。調査開始から10年目にして、AI/生成AIが初めて投資項目のトップになったと書かれています。
https://www.dell.com/ja-jp/blog/it-2026/
一方、中小企業基盤整備機構が2026年3月に公表した実態調査では、AIを導入済みの企業は20.4%です。検討中の18.6%を足しても39.0%にとどまります。
https://www.smrj.go.jp/research_case/questionnaire/fbrion0000002pjw-att/202603_AI_point.pdf
この2つは、別の機関が別の設問で行った調査です。同じ会社に両方を聞いたわけではありません。ですから「7割が予算を組んだのに2割しか動いていない」と因果でつなぐことはできません。
それでも、2つの数字が向いている方向は同じだと感じています。お金を出す気はある。でも、まだ始まっていない。
デルの調査については、もう一つ断りが必要です。回答者は中堅中小企業のIT担当者です。情報システムの担当を置いている会社が中心なので、総務の方が兼任で全部を見ている規模の会社よりは、少し大きい層に寄っている可能性があります。有効回答数も公表されていません。
だから私は、この68.1%を「日本の中小企業の7割が」という意味では使っていません。
金額から決めると止まる。対象業務から決めると動く
いま支援している会社で、補助金の採択まで進んだ案件があります。金額の枠は決まり、契約書も交わしました。
それでも、いちばん時間がかかっているのは「何を、どこに頼むか」を決める部分です。制度と金額が先に決まっていても、対象が決まらないと物事は動きません。
AIの導入も、同じ形をしています。
逆から入ると進みます。毎月かならず発生していて、担当が変わると品質が落ちる作業を1つ挙げてもらう。そのうえで、その作業にいくらまで出せるかを考える。
順番を入れ替えるだけで、次の一手が具体的になります。予算の総額が決まっていなくても、1つの作業に対する金額なら、その場で判断できるからです。
100万円の中身を3つに分けて考える
金額を先に決めても動かない理由がもう一つあります。100万円が何に対しての金額なのかが、曖昧なままだからです。
中身は3つに分かれます。
- 道具の費用。月額のサービス料です。多くの場合、3つの中でいちばん小さくなります
- 人の時間。誰かが手順を作り、社内に説明し、質問に答える時間です。ここがいちばん大きくなります
- 作り直しの費用。最初に作ったものは、たいてい一度は作り直します
私自身の作業でも、3つ目を見込まずに始めると必ず足が出ます。うまくいかない前提で予定を組んでおかないと、作り直しの段階で「そこまでやる話だったか」と気持ちが折れます。
人の時間と作り直しを含めて見積もると、道具の月額だけを比べていたときとは違う判断になります。安いほうを選んだのに高くついた、という順番を避けられます。
最初に書くのは1行だけ
やることは1行です。
「どの業務を、誰の手から外すか」
業務名だけでなく、その業務をいま持っている人の役割まで書きます。たとえば「請求書の発行を、経理担当の手から外す」。
ここまで書けると、必要な道具も、かかる時間も、頼む相手も、あとから決まります。
逆に「業務効率化にAIを使う」までしか書けていないうちは、金額をいくらに決めても着手できません。何を買えばいいのかが決まらないからです。
1行で書けない場合は、その業務がまだ分解できていないという合図だと考えています。
予算がつく前にできること
同じ中小機構の調査では、公的支援に期待することの1位が「導入費用の助成」で77.9%でした。費用の負担が重いのは事実です。
ただ、助成が決まるまで手が止まる必要はありません。お金をかけずに、いま2つできます。
- さきほどの1行を書く
- その業務に、いま何時間かかっているかを1か月だけ測る
この2つは、そのまま補助金の申請書にも使えます。逆に、導入前の時間を測っていない会社は、導入後にどれだけ効果が出たのかを自分でも証明できません。
金額を決めるのは、そのあとで間に合います。
AIをどこから始めるか決めきれない、という段階でのご相談も承っています。
岩手県AI活用協会について
当協会は東京都八王子市と岩手県盛岡市に事務所を置いています。ご相談の内容に応じて、現地にうかがうこともあれば、オンラインで進めることもあります。盛岡でのAI活用支援については「盛岡のAI活用支援」のページもご覧ください。
AI活用のご相談は無料相談からお気軽にどうぞ。
この記事は、当協会の工藤浩二がnoteに同日掲載した記事を、協会ブログにも掲載したものです。
note版:AIに100万円出す会社は7割、始めている会社は2割

