ビフォーアフター写真を同じ画角で撮る方法|現場の困りごとをAIで小さく解決
リフォームや工事の現場で撮るビフォー・アフターの写真。並べてみると、同じ場所のはずなのに別の部屋に見えてしまう――そんな経験はないでしょうか。きれいになったことは伝わっても、どこがどう変わったのかが伝わりません。
この記事では、写真の画角がそろわない理由と、その困りごと「だけ」を解決するために当協会の工藤が自作したブラウザアプリ「現場ビフォーアフターカメラ」の仕組みを紹介します。あわせて、作る途中でつまずいた3つの点と、AIを使って社内の道具を作るときに「作るもの・作らないもの」をどう線引きするかを整理します。
ビフォー・アフター写真の画角がそろわないのは、腕の問題ではない
ビフォーを撮るのは工事の前、アフターを撮るのは何週間も後です。撮る人が違うこともありますし、同じ人でも、あの日どこに立ってどの高さで構えたかまでは覚えていません。
つまり、写真がそろわないのは当たり前のことです。気合いや心がけで解決する話ではありません。
それでもこの写真は、見積書や提案書に貼られ、ホームページに載り、口コミの代わりに使われます。左に寄った写真と少し離れて撮った写真では比べようがなく、仕事の中身は変わっていないのに、伝わり方だけが目減りしてしまいます。
必要だったのは多機能な仕組みではなく、道具を1つだけ
写真管理のサービスはたくさんあります。ただ、どれも「現場を登録して」「案件を作って」「担当者を割り当てて」から始まります。
やりたいのは、前の写真を透かして重ね、同じ位置で撮ることだけです。そのためにアカウントを作り、現場を登録し、月額を払い、社内に使い方を説明する。ここまでやると、たいていの会社では続きません。
欲しかったのは、機能の多い仕組みではなく、困りごと1個ぶんの道具でした。見つからなかったため、2026年8月30日に自分で作りました。
現場ビフォーアフターカメラでできること
ブラウザで動くアプリで、インストールもアカウント登録も要りません。
https://circle-nine.com/genba-camera/
使い方は3ステップ
- ビフォー写真を選ぶ
- その写真が薄く重なった状態でカメラが開くので、線が合う場所まで動く
- 撮ってスマホに保存する
重ね方は5種類。いちばん合わせやすいのは「輪郭線」
重ね方は、半透明・輪郭線・左右分割・上下分割・点滅の5種類です。
半透明だと画面が二重になり、どちらの線を合わせているのか分からなくなります。輪郭だけを白い線で出すと、窓枠や柱の角が目印になり、位置がぴたりと決まります。
撮り間違いと情報の扱いへの配慮
- 撮影枠は、選んだビフォー写真と同じ縦横比で固定。縦で撮ったビフォーに対してアフターだけ横で撮る、という事故が起きません
- 写真は端末の中だけに残り、サーバーには送りません。お客様の家の中が写るものなので、預かる先を増やさない作りにしています
作ってみて、うまくいかなかった3つのこと
1. 撮った写真を保存できなかった
最初は手軽に動かせる作り方を選びましたが、その環境では端末への保存がふさがれていました。カメラを扱うなら自前のサーバーが要る、と分かるまでに半日かかりました。
2. スマホを横向きにすると撮影画面が極端に小さくなった
実測で179×134ピクセル。切手ほどの大きさで位置合わせをする画面になっていました。原因は、操作パネルを画面の下に置いていたことです。横向きのスマホは表示できる高さが320ピクセルほどしかなく、そこから下のパネルを引くとほとんど残りません。
横向きのときはパネルを右の余白に縦に置くよう直し、撮影画面は512×384、面積で8.2倍まで広がりました。設計を直しただけで、機能は1つも増えていません。
3. ファイルをサーバーに1つも上げられなかった
原因は、フォルダ名に日本語が入っていたことでした。英数字だけの場所にコピーしてから上げ直すと、そのまま通りました。
3つとも、「作る前に考えれば分かった」類の話ではありません。実際に触ってみて初めて出てきたことです。
AIで社内の道具を作るときの線引き
こうした道具を作るときは、作るものと作らないものの線引きを決めています。
- 作るもの:困りごとが1つで、間違えても撮り直せばいいもの。うまくいかなくても現場が困りません
- 作らないもの:お金と契約と個人情報が乗るもの。つまり販売管理・請求・勤怠のような業務システム。止まった瞬間に会社が止まります
AIを使えば、以前より短い時間で動くものが作れます。ただ、作れる範囲が広がったことと、作っていい範囲が広がったことは別です。ここを混ぜると、数年後に誰も直せないものが社内に残ります。社内でAIを使うときのルールづくりについては「生成AIの社内ルールの作り方|中小企業向け7項目と4ステップ」でも紹介しています。
小さい道具のほうが、現場で使われる
正直に書いておくと、このアプリはまだ実際の工事現場では使っていません。手元で動かして直した段階で、現場で使えばまた別のことが出てくると思っています。
それでもこの作り方をお勧めする理由は、時間の計算にあります。たとえば、写真がそろわなくて撮り直しに行く。往復と撮影で1時間だとします。社長ご自身が動いているなら、その1時間の単価はいくらでしょうか。ひと月に2回あれば、年間で24時間です。
多機能な仕組みを入れて全社に定着させるより、困りごと1個を消す道具を1つ作るほうが、この手の時間はよほど早く減ります。
まとめ
- ビフォー・アフター写真の画角がそろわないのは当たり前。仕組みで解決する
- 欲しいのは多機能な管理サービスではなく、困りごと1個ぶんの道具
- AIで作るのは「間違えても撮り直せるもの」まで。お金・契約・個人情報が乗るものは作らない
- 最初の1個は、社内で「毎回ちょっと面倒」と言われている作業から選ぶ
AIで何かを作ってみたいというご相談には、いちばん小さくて、いちばん誰も困らないところから始めることをお勧めしています。
岩手県AI活用協会のサポート
当協会は東京都八王子市と岩手県盛岡市に事務所を置いています。ご相談の内容に応じて、現地にうかがうこともあれば、オンラインで進めることもあります。盛岡でのAI活用支援については「盛岡のAI活用支援」のページもご覧ください。
「自社ではどの作業から始めればよいか」を一緒に整理したい方は、お気軽に無料相談からお問い合わせください。
※この記事は、工藤がnoteに書いた記事(現場写真を「同じ画角」で撮るアプリを作った)の内容を、ブログ向けに再構成したものです。

